1. フローラ健康教室と啓発活動

フローラ薬局では、針灸院、エステサロンも併設しており、薬剤師の他、針灸師、管理栄養士、健康運動指導士、エステティシャン、リフレクソロジスト、ケアマネージャーらスタッフを揃え、糖尿病患者の療養支援を重視した保険調剤のほかに、訪問服薬指導、特殊栄養食品の相談販売、スキンケア相談、介護相談、禁煙支援、学校薬剤師活動にも取り組んでいます。また本店では、国際中医師A級を取得した主人の篠原泰友(薬剤師・針灸師)が漢方の相談・販売、医師と連携した漢方の結合治療、と漢方調剤にも力を入れています。さらに、「有効で安全な薬の飲み方」、「生活習慣予防教室」、「禁煙の啓発」、「健康運動教室」などの教室を薬局のほかに地域の公民館や学校に出向いて行ったり、当薬局の薬草・ハーブ園で取れたての新鮮なハーブ、季節の草花を使った「薬膳教室」や「薬草生け花教室」 など地域に開かれた健康教室を開催してきました。(写真参照)でもこれらは、決して薬局以外の事業を手広くやっているわけではありません。


例えば、ガーデンニングで人気のミントやセージなどのハーブは薬草ですし、生け花にも使うユーカリは、室内の殺菌作用があり、風邪の予防効果のあるアロマテラピーにもなります。つまり、身近で触れたり、楽しんでいるものの中には、人々の健康と薬に関わりのある部分が意外と多いのです。テレビや雑誌、チラシなどからの「薬と健康に関する話題」を一面的な情報だけ捕らえて誤った使い方をしないよう、薬剤師の視点から身近な問題を掘り起こし、客観的で正しい薬の情報提供をしていきたいというのが「薬草生け花教室」や「薬膳教室」などの健康教室を開催したそもそもの目的です。


こうして続けてきた地道な取り組みは、その場で直接の営業利益に結びつかなくても、患者・地域住民に医療貢献できれば「薬局・薬剤師は、地域住民から身近で、信頼できる健康相談相手」として社会的に認められ、後に成果が上がるはずです。当薬局で行う全てのサービスは、「薬と健康管理に関する啓発活動を通じて、一人一人に合った薬・医療・介護・保健・美容のトータルアドバイスができる薬局づくりを目指す」という当薬局の理念に基づいています。

2.当薬局の薬草生け花教室

「薬」は、草かんむりに「楽」と書くその漢字のつくりからも、人の体の苦痛を「楽」にしてくれる草花から生まれた、先祖の知恵と経験、科学の結晶です。薬剤師として、季節の草花を「薬草」という視点でも捉え、生け花の楽しさ、美しさを地域の方とともに味わえたらという思いで、4年前から始めました。

教室は、毎月一回、生け花指導に草月流師範の笹島英湖先生を講師に迎え、私が当薬草園のハーブも花材に加えて、薬草や健康の話をしたり、ハーブティーを楽しみながら行っています。笹島先生との出会いは、当薬局に知人からの紹介で、華道家として体調を維持するための健康相談に、お客様として見えたことがきっかけでした。現在教室のスタッフは、私の他に管理栄養士の橋本直美が入り、生け花の勉強の成果を、薬局の空間ディスプレイの演出に生かしています。さらに平成15年9月からは、生け花指導の講師に東京より谷脇雄青先生もお招きし、フローラ薬局閉店後のカルチャールームを開放して働く人達のための夜の生け花教室を開催することになりました。

3、「竹をテーマにした薬草生け花」

青々とした竹林にいると、マイナスイオンに包まれて、身も心も心地よいものです。おにぎりを竹の皮で巻くと防腐効果が得られることはご存知のように、竹(竹葉;ちくよう)は、薬剤師の目からみても、殺菌効果があり、炎症やほてりを鎮め、むくみをとる効果があるので、神経痛の方や、高温多湿の日本の夏や食中毒の多い9月にかけて、おすすめの薬草です。今回、華道家 笹島英湖先生の活躍をフローラ薬局としても応援してきたことが実り、地元水戸のプラザホテルにおいて、草月流の竹の生け花の作品が、薩摩びわの演奏とのコラボレーション、ジャズ演奏と竹の舞台のコラボレーションという形で演出され、夏の夜、照明に照らされた生け花と音楽の素敵な競演となりました。

 

笹島先生、谷脇先生ご指導のもとに、竹の花器を作り、薬局に生け花を飾りました。合わせて、夏から9月にかけておすすめした、「竹を使った薬膳メニュー」の一例をご紹介します。竹葉の効用で湿気による夏ばてを防ぎ、竹皮の殺菌効果で、食中毒をまもる工夫をしたメニューを考えました。

 

竹のほかバジル、蓮の実、緑豆、あずき、フェンネル(種)、チンピ、ハイビスカスなどいずれも夏の暑さと湿気によるだるさをとり、夏ばて予防と胃腸の働きを高めるのに役立つ薬草・ハーブです。フェンネルの種(ウイキヨウ)は、例えば漢方胃腸薬にもよく配合される薬草です。ほかに、シソやわさびなども殺菌効果のある身近な薬草です。さしみなど生ものをとるときに添える薬味は、食中毒の予防に意味があることを知るだけでも、薬膳の知恵が役立つでしょう。

夏におすすめしていた「竹を使った薬膳メニュー」

(前菜)フローラハーブ園のフレッシュバジルのスパゲティ
(スープ)バジルとかぼちゃのスープ
(主食)竹の皮の香りを楽しむ蓮の実、松のみ入りチマキ、
(副菜)竹葉と苦瓜(ゴーヤ)の炒めもの
(デザート)緑豆とあずきのデザート、フェンネル(ウイキョウ)入りのクッキー
(お茶)ハイビスカスと陳皮のティー

4.秋の薬草生け花と薬用効果

桔梗(キキョウ)は、「秋の七草の一つ」として有名な、秋の薬草です。桔梗の根、キキョウ根は、実際、咳を鎮め、痰を切る効果があり、風邪をひきやすい秋の季節によく用いられる漢方生薬の一つです。キキョウというと、一般には、青紫色の花を思い浮かべますが、今回は、面を構成した緑色のハランとのバランスを考え、白の水盤に、白のトルコキキョウを生けてみました。
 もう一つ代表的な秋の薬草としてあげたいのが、菊です。陰暦9月9日は、重陽の節句、または菊の節句ともいわれます。この季節に咲く菊は、寿客(じゅかく)、齢草(よわいぐさ)などと、人間にとって一番の願いである長寿と結びつく名前で呼ばれてきました。菊の花(キクカ)は、炎症を鎮めたり、目の疲れをとったり、鎮静作用もあるといわれています。キクカにクコの実と合わせたものは、肝の働きを良くして、目の疲れをとる効果のあるコギク地黄丸という漢方薬としても知られています。菊の花を、抗炎症作用のある薬草レンギョウとともに、マッス(かたまり)を作って、床の間のない薬局の空間に合う生け方をしてみました。
では、次にキクとクコの実を使った秋の薬膳について紹介しましょう。

5.秋の薬膳

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秋の養生を中国医学の陰陽五行説にもとづいた季節と食べ物の関係からみていくと、秋は燥(乾燥性)と肺(呼吸器系)とのつながりがあるとされています。すなわち秋は、夏に比べて気温が下がり、涼しくなるとともに、湿度も急激に下がり、空気が乾燥してきますので、呼吸器系を傷め、風邪をひきやすい季節でもあります。ですから秋の薬膳には、肺(呼吸器系)を守り、体を潤す食べ物が適するとされています。例えば、梨、柿、りんご、いちじく、しろきくらげ、ぎんなん、豆乳、芋類、きのこ類などといった身近な旬の食材がおすすめです。今回紹介するメニューに用いる「五味子ごみし」という生薬は、「小青竜湯」(寒気がして鼻水が出るといった風邪の初期症状に良く用いられる漢方薬)にも入っていて、体を潤し、汗や尿、鼻水などが余計にもれ出るのを防ぐ働きがあります。逆に、この季節控えた方が良い食べ物は、激辛カレーなど辛熱性があり、体の乾燥を招きやすいものや、ナスなど涼性の体を冷やす食べ物です。中国の古典医学書、本草書(漢方薬の効能・効果を解説したもの)にもナスは胎毒があるので、妊婦には禁止ということが記載されていて、実際サーモグラフィーを使ってナスを食べた婦人の体の温度を測ってみると、食べない人に比べて明らかに腹部も体表の温度が下がってくることがわかっています。「秋茄子(ナス)は、嫁に食わすな」という言葉がありますが、秋口のナスは、美味しいのでそれを嫁に食べさせたくないという嫁いびりの意味ではなく、涼性のナスは、体を冷やすので秋に食べるとお腹を冷やしてしまい、妊娠中または妊娠の可能性のある嫁の体には良くないという薬膳の知恵からきているものなのです。

秋の薬膳メニュー例    薬剤師 篠原久仁子  管理栄養士 橋本直美

「春菊、菊花、クコシのゴマ酢合え」 (一人分20キロカロリー、塩分0.4グラム)
材料(3人分) 春菊 1把、食用菊花 16輪、クコシ5g(生薬代 100円程度)
          五味子酢(五味子9gを、900mlの酢に漬け込んで作る)大さじ4
          ラカントSシロップ (カロリーゼロの甘味料)小さじ2
          キッコーマンだしわりしょう油
          (低塩、低たん白、低リン、低カリウムしょうゆ) 大さじ1
作り方
@ 春菊をゆでて、水気をきり、3センチくらいの長さに切る。
  菊花は、花びらをさっとゆでて、水にとり、水気を絞る。
A クコシを五味子酢に浸して戻し、いりごまと1を合わせて、味をととのえてできあがり。

薬効 季節の菊の花は、クコシと合わせると疲れ目や充血に効果的。緑黄色野菜の春菊に、体を潤す効果のある五味子酢を用いています。五味子は、体を潤し、元気をつけ、咳を鎮める作用があります。酢に漬け込んだ五味子酢を作っておくと、酢の味がマイルドになり、くせもないので、料理用に、卓上用にいつでも、だれもが秋の養生に使えて便利です。糖尿病や腎機能低下の方、またその予防のためのメニューとしても使えるよう、治療用食品の調味料を使いましたが、もちろんそこまで必要のない方は、ご家庭にある調味料を使っても塩分やカロリーの少ないメニューになっています。

生け花写真

【夏の薬草生け花】
竹の薬草生け花
【春の薬草生け花】
彼岸桜とこでまり
【冬・正月の生け花】
新年の竹の器を使った生け花

【冬・クリスマスの生け花】


【秋の薬草生け花】
秋の七草(薬草)のまぜざし
 
春の薬草生け花 「枝を折った桜の生け花」 
草月流 篠原櫻湖
花材:山形県産啓(けい)翁(おう)桜(ざくら)(支那桜桃と彼岸桜を交配して作られ た品種で、形のよい枝が何本もまとまって一つの株を作る。花は、洋風とも思えるさ わやかな香り。桜皮には、フラボノイドのサクラニンなどが含まれ、葉にはクマリン配糖体が含まれ、これが桜餅の独特の香りになる)薬効:桜の皮がオウヒとして、江戸時代から蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病の治療、また解熱、咳止め、収斂薬として知られていた。華岡青洲は、桜皮を用いた十味敗毒 湯を用いていた。現在でも、鎮咳去痰薬としてブロチンなど医療用製剤や一般用医薬 品のパイロンαなどに配合されている。桜は、四季が美しい日本を象徴する花であり、薬草でもある。桜の生け花は、皮1枚つながっていれば、枝を折っていてもその先端まで水が行き届き、すべての蕾に花を咲かせる。他の花にはない情緒的な美し さ、困難にも負けない強さ、生命力、桜皮の薬効を感じさせる大好きな花である。